厚生労働省は9月3日、介護給付費分科会を開催し、「口腔・栄養管理」をテーマに、介護保険における低栄養状態のリスク判断基準と、医療現場で用いられている「GLIM(Global Leadership Initiative on Malnutrition)基準」が示されました。
委員からは、現行のリスク判断に用いられている血清アルブミン値の見直しや、医療機関から提供されたGLIM基準による診断結果を介護現場のケアにどう生かすかについて、今後研究を進める必要がある等の意見が出されました。
介護の低栄養リスク判断、平成17年以降大きな見直しなし
介護保険では、BMIや体重減少率、血清アルブミン値、食事摂取量、栄養補給法などにより、低栄養状態のリスクを「低・中・高」に分類しています。
今回、厚労省は、このリスク判断基準が平成17年に導入されて以降、大きな見直しが行われていないと説明しました。
一方、低栄養の国際的な診断基準として、医療現場や診療報酬で用いられているGLIM基準を紹介しました。介護保険のリスク判断で使用されている血清アルブミン値については、炎症などの影響を受けるため、現在の国際的な低栄養の診断基準では用いられていないことも示しました。
GLIM基準とは
GLIM基準は、2018年に世界の主要な臨床栄養学会によって策定された成人の低栄養診断基準です。
まず、MUST、NRS-2002、MNA-SFなど、妥当性が確認されたツールによる栄養スクリーニングを行い、低栄養リスクが認められた場合にGLIM基準による評価へ進みます。
GLIM基準では、次の「表現型基準」と「病因基準」を組み合わせて判定します。
表現型基準
病因基準
- 食事摂取量の減少または消化吸収能の低下
- 疾病負荷または炎症
表現型基準と病因基準のそれぞれで1項目以上に該当した場合に低栄養と診断し、表現型基準に基づいて中等度または重度に分類します。
血清アルブミン値は、GLIM基準の診断項目には含まれていません。
「医療から得た診断をケアにどう生かすか」
分科会では、江澤和彦委員(日本医師会常任理事)が、血清アルブミン値は炎症などの影響を受けることから、介護保険における低栄養の指標から除外すべきとの考えを示しました。
また、GLIM基準については、医療現場で用いられる低栄養の診断基準であると説明しました。介護現場では、医療機関からGLIM基準による情報提供があった際に、その診断をケアにどう生かすかが重要である一方、まだ十分に議論されていない分野であり、今後研究を進める必要があると述べました。
診療報酬では令和6年度改定で導入
令和6年度診療報酬改定では、入院基本料等における栄養管理手順へのGLIM基準の活用が望ましいとされ、入院栄養食事指導料の対象となる低栄養患者の判断にもGLIM基準が取り入れられました。
なかでも、回復期リハビリテーション病棟入院料1では、入棟時と退棟時の栄養状態の評価にGLIM基準を用いることが要件となりました。
回復期リハビリテーション病棟入院料2~5については、GLIM基準を用いることが望ましいとされました。
厚労省の疑義解釈では、栄養状態を再評価するたびにGLIM基準を用いる必要はないものの、少なくとも入棟時と退棟時には評価を行うことが示されています。
また、「GLIM基準による評価」には、GLIM基準による判定に先立つ栄養スクリーニングも含まれます。スクリーニングで低栄養リスクが認められなかった場合、関係様式では「低栄養非該当」を選択します。
令和8年度診療報酬改定後も、回復期リハビリテーション病棟入院料1ではGLIM基準による評価が施設基準に位置づけられ、入院料2~5ではGLIM基準を用いることが望ましいとされています。
介護報酬の様式にもGLIM評価の記載欄
令和6年度介護報酬改定では、「リハビリテーション・栄養・口腔に係る実施計画書」などの関連様式に、GLIM基準による評価結果を記載する欄が新たに設けられました。
記載欄では、
のいずれかを選択します。
ただし、欄には「医療機関から情報提供があった場合に記入する」と明記されています。介護事業所・施設にGLIM基準による低栄養診断を求めるものではなく、医療機関で得られた評価結果を介護側で共有するための位置づけです。
医療の診断を介護のケアにつなげられるか
現時点では、診療報酬と介護報酬でGLIM基準の位置づけは異なります。
診療報酬では、回復期リハビリテーション病棟入院料1における栄養評価の要件としてGLIM基準が導入されています。これに対し、介護報酬関係の様式では、医療機関から情報提供を受けた場合に、その評価結果を記載する位置づけとなっています。
今後は、現行の介護保険における低栄養状態のリスク判断基準をどのように見直すかに加え、医療機関から提供されたGLIM基準による診断・評価結果を、介護現場で誰が受け取り、どのようにケアへ反映するかが課題となります。
低栄養は、筋力や身体機能、日常生活動作、リハビリテーションの効果にも関係します。医療と介護の間で栄養状態を切れ目なく共有し、リハビリテーション、栄養、口腔の一体的な支援につなげられるかが、今後の検討の焦点となりそうです。
引用・参考
◼️ 第264回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省HP)
・【資料4】口腔・栄養、一体的取組
◼️ 令和6年度診療報酬改定について(厚生労働省HP)
・令和6年度診療報酬改定説明資料等について
・疑義解釈資料の送付について(その1)
◼️ 令和6年度介護報酬改定について(厚生労働省HP)
◼️ 介護保険最新情報Vol.1217(リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について)(厚生労働省HP)