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2025.10.22

リハビリ専門職の賃上げ、7割の施設でベースアップが未実施【リハ3団体実態調査】



リハビリテーション専門職団体協議会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会)は、「令和7年度リハビリテーション専門職の賃上げ実態調査」の結果を発表しました。

調査の結果、現金給与総額の引き上げが実施されていない施設が、医療施設で約3割、介護施設・事業所で約6割、障害福祉施設・事業所で約5割にのぼることが明らかとなりました。

昨年度の調査と比較しても実施率は低下し、リハビリテーション専門職の処遇改善が十分に進んでいない実態が浮き彫りとなりました。


ベースアップは7割以上の施設で未実施

同調査は、令和6年度の報酬改定を踏まえ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が勤務する全国の医療施設や介護・障害福祉施設を対象に実施されました。

2025年7月1日から15日の期間に、WEBアンケート形式で1,020施設(医療652件、介護227件、障害福祉141件)が回答し、そのデータから実態が分析されました。



調査結果によると、現金給与総額の引き上げを実施した施設の割合は、医療施設で66%、介護施設・事業所で43%、障害福祉施設・事業所で54%となりました。

つまり、昇給が行われていない施設が、医療施設で約3割、介護施設・事業所で約6割、障害福祉施設・事業所で約5割存在することになります。



さらに深刻なのが、ベースアップの実施率です。医療施設で31%、介護施設・事業所で11%、障害福祉施設・事業所で16%と極めて低い水準にとどまりました。

つまり、全体の7割以上の施設でベースアップが実施されていないことになります。




昇給額も限定的、医療と介護の格差も顕著

ベースアップが実施された施設における昇給額を見ると、医療施設では5,000円〜10,000円未満がボリュームゾーンとなった一方、介護および障害福祉施設・事業所では5,000円未満が最も多くなりました。

2023年6月から2025年6月までの2年間でベースアップがなされていない施設は、医療施設で25.9%、介護施設・事業所で39.6%、障害福祉施設・事業所で41.1%となりました。



医療施設における詳細な分析では、病院と比較して診療所(無床・有床)で給与引き上げの実施率が低いことが明らかとなりました。

特に職員数が100人未満の小規模な施設や、総職員数に占めるリハビリ専門職の割合が低い施設ほど実施率が低い傾向が見られました。

開設主体別では、「個人事業」において42.9%と最も低い実施率となりました。

介護施設・事業所では、営利法人・個人における実施率が最も低く、障害福祉施設・事業所では訪問系サービスにおける実施率が約3割と低い傾向が認められました。




現場からは「時限的な制度」への不安の声

回答者からは、処遇改善に関する様々な意見が寄せられました。

「処遇改善に関する評価が2年間の時限付きであるため、ベースアップは実施できたが、この処遇改善がなくなると給料が下がる可能性があり不安」、「処遇改善手当は一時的なものであり、恒久的な賃上げが期待できない」といった、時限的な加算制度に対する不安の声が多く聞かれました。

また、「ベースアップ加算だけでは賃金上昇分の財源には届かないため、病院経営がさらに厳しくなり結果的に賞与が下がることになった」、「支援補助金月2,000円程度では、物価高を考えると生活出費の方が益々多く賃上げの実感には至らない」といった、物価上昇を上回る賃上げの実感がないという意見も挙がりました。

さらに、「法人単位でみた時に、病院職員はベースアップ評価料の対象になったが、法人内の老健や診療所に従事する職員が対象外となった」、「当施設では処遇改善加算は介護職のみで、リハ職や看護職はついていない」といった制度や職種間の格差についての指摘もありました。


昨年度と比較しても悪化傾向

前年度(2024年度)の調査結果と比較すると、状況はさらに厳しさを増している状況です。

現金給与総額の引き上げ実施率は全体的に低下しており、特に介護施設・事業所では前年度より10ポイントも減少していることが調査結果より示されました。



ベースアップの実施率も、医療施設ではほぼ横ばいだったものの、介護施設・事業所では6.8ポイント減少しました。

障害福祉施設・事業所では4.2ポイント増加したが、依然として低水準にとどまっています。




抜本的な対策の必要性を提言

今回の調査結果は、リハビリテーション専門職として働く上での処遇の実態を示す重要なデータとなりました。

調査結果を受けて、リハビリテーション専門職団体協議会は、今後の確実な賃上げに向けた対応策として、以下の4点を提言しています。

<4つの提言>
1. すべてのリハビリテーション専門職の賃上げに確実につながる対応策とすること
2. 時限的な制度ではなく恒久的な対応策とすること
3. 医療・介護・障害福祉間の格差や職種間の格差が生じない対応策とすること
4. リハビリテーション専門職が提供する技術・サービス料の基本報酬の引き上げを行うこと

協議会は、経営の安定を図りつつ、現場で働くリハビリテーション専門職の賃上げに確実につながるような抜本的な対策を早急に行うことを求めています。


【調査概要】

● 調査期間:2025年7月1日~7月15日

● 調査対象:3団体に施設登録のある全国の医療施設、介護施設・事業所、障害福祉施設・事業所のリハビリテーション部門代表者

● 回答数 :1,020施設(医療652件、介護227件、障害福祉141件)

● 調査方法:WEBアンケート調査

※1 現金給与総額
決まって支給する給与と一時金をまとめたもの(なお、決まって支給する給与とは、当該施設・事業所や法人の労働協約、就業規則等によって、あらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給された現金給与(所得税や社会保険料等を控除する前の額)をいい、基本給と手当が該当する。)

※2 定期昇給
毎年一定の時期を定めて、社内の昇給制度に従って行われる昇給のこと

※3 ベースアップ
賃金表の改定等により賃金水準を引き上げること。賃金表がない場合は、給与規定や雇用契約に定める基本給等を引き上げること

リハビリ専門職3団体が記者会見「処遇の実態と課題」訴え

2025.04.15

【リハビリ議連】第11回総会開催 リハ専門職3団体「現場の実態」データで訴え

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引用・参考
■ 「令和7年度リハビリテーション専門職の処遇改善調査」 リハビリテーション専門職団体協議会が結果発表(日本理学療法士協会)

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