厚生労働省は8月24日、「第4回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」を開催し、医療関係職種の養成・確保体制の在り方について議論しました。
本検討会は、2040年頃にかけて高齢者の医療・介護ニーズが増える一方、生産年齢人口や18歳人口が減少していく状況を見据え、地域で必要な医療関係職種を安定的に養成・確保する方策を検討するものです。
18歳人口が減り続けるなか、地域で必要な担い手をどう確保するのか。都道府県を主役とした新たな「枠組み」の姿が、具体的なイメージとともに示されました。
医療関係職種の養成・確保体制の在り方について
厚生労働省は、昨年の医療法改正で新たな地域医療構想と医療計画の枠組みが整い、医療従事者の確保が都道府県の役割として位置づけ直されたことを踏まえ、次の2点が論点として示されました。
- 都道府県が人材・養成体制の確保を実効的に進められるよう、将来の需給見通しや養成体制のデータを都道府県間で比較可能な形で提供する環境を整備し、大学も含めた関係者が参画するプラットフォームで確保方策を協議・計画的に進める枠組みが必要ではないか。国は方向性の提示やデータ・ガイドライン整備で支援してはどうか。
- 必ずしも各都道府県に養成施設があるわけではない職種について、卒業生の就職先の地理的分布など実態を把握し、検討を深めてはどうか。
厚生労働省は、看護師・作業療法士などの卒業生が概ね養成校所在地の都道府県に就職する傾向を示す一方、県ごと・学校ごとに果たす役割が異なること、視能訓練士・診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士は必ずしも各県に養成施設がなく供給実態の把握が必要なことをデータで提示。
都道府県単位のプラットフォームで「地域の状況把握」から「取り組みの協議・実施」につなげる枠組み案を示しました。
なお、本検討会の議論は、資格制度そのものの見直しではなく、現行の各職種の業務範囲を前提として確保方策を検討することが確認されています。
主な議論
プラットフォーム構築の方向性には幅広い賛同が集まる一方、国による標準的フォーマットの整備と比較可能なデータの効率的把握を求めるなど、枠組みには多くの意見も寄せられました。
また、離職・定着・賃金・処遇・勤務環境まで含めた把握や、働く医療従事者・労働者側の意見も反映する構成として、養成から確保・定着までを一体的に議論すべきとの声も挙がりました。
学校組織(養成校など)は若年人口減で需要が見込めなければ撤退が合理的となり得るなど、医療機関とはインセンティブが異なるとして、教育委員会・雇用担当部局の協力や国レベルでの関係省庁・部局の目線合わせを求める指摘もありました。
地方行政の立場からは、将来の需給見通しに基づく議論とあわせて「今の医療をどう支えるか」も重要であり、実効性ある枠組みの運用への技術的・財政的支援を強く求める声が示されました。
さらに職種固有の事情も多く意見が挙がりました。就業先の多様さ(消防・自衛隊・民間、事業所勤務など)や、資格制度上データの対象外となる養成課程があることから、免許取得者の把握だけでは実際の需給が見えないとの指摘が相次ぎました。
これを受けて、届出制度の強化、関係機関との連携、マイナンバーカードへの国家資格記録・就業実態分析、未就業の免許保持者の把握など、データ整備の拡充を求める意見が数多く出されました。
また、将来見通しの試算が難しいことを踏まえ、リスクの高い職種・地域からのスモールスタートとメリハリある進め方を求める提案もありました。
文部科学省はこれらの議論を受け、大学の認証評価で分野別評価の検討が進んでいること、医療関係のプラットフォーム事業に一部の県で専門学校も参画していることを補足しました。
PT・OT・STからの発言
日本作業療法士協会・山本伸一会長は、地域ごとの人材需給をデータに基づき把握し、養成・確保・定着を一体的に進める方向性に賛同。単純な就業者数・養成数の比較だけでなく、「どの地域で、どの領域で、どのような専門性を持つ人材が必要か」という視点が不可欠だと述べました。
作業療法士は介護、障害福祉、精神保健、学校、就労支援など幅広い領域に関わることから、病院中心の従来型の需要だけでなく総合的な需要を反映すること、養成した人材が地域で就業し長く働き続けられる環境まで含めて考えることを求めました。
日本言語聴覚士協会・内山量史会長は、養成校がない都道府県では他県から人材を移動させるだけでは持続的な確保につながらないと指摘。地域で学び、地域で就職し、地域で働き続けられる仕組みを、都道府県・養成校・医療機関が連携して構築すべきだと提起しました。
続けて、サテライトやスクーリング、遠隔授業、地域医療機関を活用した実習、修学資金や通学・住居支援を組み合わせた「地域定着型」の養成体制の詳細なモデルの提示を要望。養成校の経営悪化や廃止が明らかになってからでなく、プラットフォームで早期に関係者が協議できる仕組みを構築すべきだとしました。
そのうえで、「単に人を確保する」考え方から、「2040年の地域医療を支える質の高い人材を、必要な地域で持続的に育てる」視点での検討を求めました。
日本理学療法士協会・斉藤秀之会長は、2つの論点をいずれも早急に進めるよう求めつつ、供給側のデータには様々なバイアスがあるため前提条件を明示してミスリードを避けるよう要望しました。
プラットフォームの枠組みが養成施設側に軸を置いている点については、卒業生の就職先の職場の教育体制・受け入れ体制も確保を左右する要因であり、そこも可視化できるようにしてほしいと述べました。
各団体の生涯学習制度と職場との連動が確保にも影響し得ること、国家試験の受験料引き上げの動きが人材確保のネガティブ要因になり得ることにも触れ、今後の検討を求めました。
地域で必要な人材を持続的に育てる仕組みを
都道府県単位のプラットフォームと、比較可能なデータ整備。方向性そのものには幅広い賛同が集まりましたが、県や関係者に過度な負担をかけず、いかに実効性のある仕組みとして動かしていくかが問われます。
データの範囲をどこまで広げるか、養成校がない職種をどう位置づけるか、そして「今の医療」と「2040年の医療」の双方をどう支えるか、残された論点は少なくありません。
人材の養成には時間がかかり、2040年に向けて残された時間は多くありません。地域で必要な人材を持続的に育てる仕組みを、どう具体的な形にしていくのか。検討会の議論の行方が引き続き注目されます。
引用・参考
■ 第4回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会(厚生労働省HP)
・資料4_医療関係職種の養成・確保体制の在り方について