各省庁は令和9年度予算の概算要求を公表しました。さきに厚生労働省の概算要求からリハビリテーションに関わる施策を整理しましたが、リハビリテーション専門職に関わる施策は厚労省だけにとどまりません。
本記事では、文部科学省・こども家庭庁・スポーツ庁の令和9年度概算要求を取り上げます。特別支援教育や障害児支援、スポーツの医・科学サポートといった場面で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が関わる事業が計上されています。
全体像
令和9年度の概算要求では、厚労省の「攻めの予防医療」などに加え、教育・こども・スポーツの各分野でも、リハビリテーション専門職に関わる事業が計上されています。
一口にリハビリテーション専門職関連といっても、「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」と職種名がはっきり書かれている事業もあれば、職種名は出てこないものの、リハビリテーション専門職が実務で関わる領域として組まれている事業もあります。
【文部科学省】特別支援教育の外部専門家にPT・OT・ST
文部科学省は、特別支援教育の充実に195億円(前年度175億円)を計上しました。
このうち外部専門家の活用等(195百万円・拡充)では、専門的な見地から教員に助言等を行う専門家として、医師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、手話通訳士などの活用を支援するとしています。リハビリテーション専門職が学校現場で子どもの学びを支える役割が、予算の面でもはっきり位置づけられています。
あわせて、令和8年7月に成立した改正医療的ケア児支援法を踏まえ、医療的ケア看護職員の配置(5,346百万円・拡充)や、学校における医療的ケア実施体制構築支援事業(24百万円・新規)が盛り込まれました。発達障害のある子どもへのICTを活用した支援なども続きます。
【こども家庭庁】障害児支援のリハ職配置、リハ職を目指す人への支援
こども家庭庁でも、障害児支援や子どもの養育を支える施設などで、リハビリテーション専門職が関わる事業があります。
乳児院等多機能化推進事業(拡充)では、障害等を有するこどもの受入れ・入所中の支援を進めるため、障害児支援事業所等との連絡調整や施設での養育上の支援、職員への指導・助言などを担う職員として、理学療法士や作業療法士等を配置することが明記されました。
リハビリテーション専門職を目指す人への支援もあります。
ひとり親の資格取得を後押しする高等職業訓練促進給付金等事業(拡充)では、給付の対象となる資格の例として、看護師や保育士などと並んで理学療法士・作業療法士が挙げられています。
訓練期間中に月10万円などを支給するもので、リハビリテーション専門職への入口を経済面から支える仕組みといえます。
このほか障害児支援の分野では、医療的ケア児等総合支援事業(拡充)や、発達に特性のあるこどもへのアセスメント強化・伴走的支援推進事業(新規)などが計上されています。
【スポーツ庁】医・科学サポート領域への広がり
スポーツ庁のスポーツ関係予算は578億円(前年度368億円)です。アスリートを医学・科学の面から支える「医・科学サポート」(メディカルチェックやトレーニング、栄養など)の領域でも、リハ職が関わる事業が複数計上されています。ただし、予算事業の資料に「理学療法士」等の職種名の記載はなく、リハ職が実務で関わる領域という位置づけです。
女性アスリートの育成・支援プロジェクト(1.5億円・拡充)では、産婦人科医や看護師によるメディカルチェックに加え、専門スタッフによる妊娠期・産後のトレーニング・栄養・心理などの医・科学サポートを進めるとしています。過度なトレーニングや食事制限などによる「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」の三主徴や、月経随伴症状への対応も課題に挙げています。
なお、策定中の第4期スポーツ基本計画(令和9年4月運用開始予定)の中間報告案では、妊娠期・産後の女性向けスポーツ促進などで「理学療法士」が明記されています。今回の概算要求と重なる動きとして注目されます。
パラアスリートの医・科学支援強化事業(1.2億円・拡充)では、機能障害の評価からトレーニング実施までを切れ目なく行うトータルコンディショニングの提供体制の整備を中心に据えています。
このほか、パラスポーツ推進プロジェクト(2.4億円)では、国立大学等の教員養成課程におけるパラスポーツ実践モデルの創出や、個別の教育支援計画等を活用した関係機関の連携によるパラスポーツ振興などが新たに盛り込まれました。
日本パラスポーツ協会への補助(パラスポーツ振興事業関係、4.7億円・拡充)では、パラスポーツ指導者の養成やパラスポーツセンターの機能強化を盛り込んでいます。
その他の関連分野
このほかの省庁にも、共生社会や予防、社会参加など、リハビリテーション専門職に接点のある分野の施策があります。いずれも職種名の記載はありません。
経済産業省は、AI・半導体・ロボットが中心ですが、超高齢社会を見据え、高齢者ヘルスケア領域でのAI・ロボット実装を加速する方針を示しています。
国土交通省は、既存建築物のバリアフリー改修等への支援や、公共交通・まちづくりのバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進を続けています。生活期リハや住環境の整備に関わりのある分野です。
農林水産省は、農業と福祉が連携し、障害者などの農業を通じた就労・社会参画を支援する農福連携を進めています。
省庁をまたいで広がる、リハ専門職の活用
令和9年度概算要求では、文部科学省・こども家庭庁・スポーツ庁でも、リハビリテーション専門職に関わる事業が計上されました。
厚労省は「攻めの予防医療」で「予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション」を掲げています。
リハビリテーション専門職が関わる分野は、それにとどまらず、教育・こども・スポーツの各省庁にまたがっています。
引用・参考
◼️ 令和9年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧(文部科学省HP)
◼️ 令和9年度 概算要求(スポーツ庁HP)
◼️ こども家庭庁 令和9年度 概算要求(こども家庭庁HP)
◼️ 令和9年度概算要求・税制改正要望について(経済産業省HP)
◼️ 令和9年度予算 概算要求(国土交通省HP)
◼️ 令和9年度農林水産予算概算要求の概要(農林水産省HP)