第1 基本的な考え方
40歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げに資する措置として、入院基本料等の評価を見直す。
あわせて、退院後の生活を見据え、入院患者の栄養管理体制の充実を図る観点から、栄養管理体制の基準を明確化する。
また、人生の最終段階における適切な意思決定支援を推進する観点から、当該支援に係る指針の作成を要件とする。
さらに、医療機関における身体的拘束を最小化する取組を強化するため、医療機関において組織的に身体的拘束を最小化する体制の整備を求める。
第2 具体的な内容
1.入院基本料等の評価を見直す。
※療養病棟入院基本料、特定集中治療室管理料、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料、特定一般入院料(注7の点数を算定する場合に限る。)及び短期滞在手術等基本料については各短冊を参照。
2.入院料の施設基準における栄養管理体制の基準に、標準的な栄養評価手法の活用及び退院時も含めた定期的な栄養状態の評価を栄養管理手順に位置づけることを明確化する。
3.小児入院医療管理料等を算定する病棟のみを有する保険医療機関以外の入院基本料及び特定入院料を算定している医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援に係る指針を作成していることを要件とする。また、既に当該指針の作成が要件となっている入院料等の施設基準については廃止する。
4.入院料の施設基準に、患者又は他の患者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束を行ってはならないことを規定するとともに、身体的拘束の最小化の実施体制を整備することを規定する。なお、精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む)における身体的拘束の取扱いについては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)の規定によるものとする。
改定案 | 現行 |
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【入院料等】 [算定要件] 医科診療報酬点数表第1章第2部 入院料等 通則 | 【入院料等】 [算定要件] 医科診療報酬点数表第1章第2部 入院料等 通則 |
7 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化について、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、第1節(特別入院基本料等を含む。)、第3節及び第4節(短期滞在手術等基本料1を除く。)の各区分に掲げる入院料の所定点数を算定する。 | 7 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制について、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、第1節(特別入院基本料等を含む。)及び第3節の各区分に掲げる入院料の所定点数を算定する。 |
8 (略) | 8 (略) |
9 7に規定する別に厚生労働大臣が定める基準のうち、身体的拘束最小化に関する基準を満たすことができない保険医療機関については、第1節(特別入院基本料等を除く。)、第3節及び第4節(短期滞在手術等基本料1を除く。)の各区分に掲げるそれぞれの入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料の所定点数から1日につき40点を減算する。 | (新設) |
歯科診療報酬点数表第1章第2部 入院料等 通則 | 歯科診療報酬点数表第1章第2部 入院料等 通則 |
6 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化について、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、第1節(特別入院基本料等を含む。)、第3節及び第4節(短期滞在手術等基本料1を除く。)の各区分に掲げる入院料の所定点数を算定する。ただし、歯科診療のみを行う保険医療機関にあっては、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、当該入院料の所定点数を算定する。 | 6 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制について、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、第1節(特別入院基本料等を含む。)及び第3節の各区分に掲げる入院料の所定点数を算定する。ただし、歯科診療のみを行う保険医療機関にあっては、別に厚生労働大臣が定める基準を満たす場合に限り、当該入院料の所定点数を算定する。 |
7 (略) | 7 (略) |
8 第6号本文に規定する別に厚生労働大臣が定める基準(歯科診療のみを行う保険医療機関にあっては、同号ただし書に規定する別に厚生労働大臣が定める基準)のうち、身体的拘束最小化に関する基準を満たすことができない保険医療機関については、第1節(特別入院基本料等を除く。)、第3節及び第4節(短期滞在手術等基本料1を除く。)の各区分に掲げるそれぞれの入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料の所定点数から1日につき40点を減算する。 | (新設) |
[施設基準] 第四 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化の基準 | [施設基準] 第四 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制の基準 |
一~六 (略) | 一~六 (略) |
七 意思決定支援の基準当該保険医療機関において、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。(小児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院医療管理料、小児入院医療管理料又は児童・思春期精神科入院医療管理料を算定する病棟のみを有するものを除く。) | (新設) |
八 身体的拘束最小化の基準身体的拘束の最小化を行うにつき十分な体制が整備されていること。 | (新設) |
第四の二 歯科点数表第一章第二部 入院料等通則第6号ただし書に規定する基準 一 第四の一から四まで及び八のいずれにも該当するものであること。 二 (略) | 第四の二 歯科点数表第一章第二部 入院料等通則第6号ただし書に規定する基準 一 第四の一から四までのいずれにも該当するものであること。 二 (略) |
別添2 入院基本料等の施設基準等 第1 入院基本料(特別入院基本料、月平均夜勤時間超過減算、夜勤時間特別入院基本料及び重症患者割合特別入院基本料(以下「特別入院基本料等」という。)及び特定入院基本料を含む。)及び特定入院料に係る入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化の基準 | 別添2 入院基本料等の施設基準等 第1 入院基本料(特別入院基本料、月平均夜勤時間超過減算、夜勤時間特別入院基本料及び重症患者割合特別入院基本料(以下「特別入院基本料等」という。)及び特定入院基本料を含む。)及び特定入院料に係る入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制の基準 |
入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策、栄養管理体制、意思決定支援及び身体的拘束最小化の基準は、「基本診療料の施設基準等」の他、次のとおりとする。 | 入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策及び栄養管理体制の基準は、「基本診療料の施設基準等」の他、次のとおりとする。 |
1~4(略) | 1~4(略) |
5 栄養管理体制の基準 | 5 栄養管理体制の基準 |
(1)(略) | (1)(略) |
(2)管理栄養士をはじめとして、医師、看護師、その他医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備し、あらかじめ栄養管理手順(標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価、栄養管理計画、退院時を含む定期的な評価等)を作成すること。 | (2)管理栄養士をはじめとして、医師、看護師、その他医療従事者が共同して栄養管理を行う体制を整備し、あらかじめ栄養管理手順(栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価、栄養管理計画、定期的な評価等)を作成すること。 |
(3)~(9)(略) | (3)~(9)(略) |
6 意思決定支援の基準当該保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。 | (新設) |
7 身体的拘束最小化の基準 (1)当該保険医療機関において、患者又は他の患者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束を行ってはならないこと。 (2)(1)の身体的拘束を行う場合には、その態様及び時間、その際の患者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録しなければならないこと。 (3)身体的拘束は、抑制帯等、患者の身体又は衣服に触れる何らかの用具を使用して、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限をいうこと。 (4)当該保険医療機関において、身体的拘束最小化対策に係る専任の医師及び専任の看護職員から構成される身体的拘束最小化チームが設置されていること。なお、必要に応じて、薬剤師等、入院医療に携わる多職種が参加していることが望ましい。 (5)身体的拘束最小化チームでは、以下の業務を実施すること。 ア 身体的拘束の実施状況を把握し、管理者を含む職員に定期的に周知徹底すること。 イ 身体的拘束を最小化するための指針を作成し、職員に周知し活用すること。なお、アを踏まえ、定期的に当該指針の見直しを行うこと。また、当該指針には、鎮静を目的とした薬物の適正使用や(3)に規定する身体的拘束以外の患者の行動を制限する行為の最小化に係る内容を盛り込むことが望ましい。 ウ 入院患者に係わる職員を対象として、身体的拘束の最小化に関する研修を定期的に行うこと。 (6)(1)から(5)までの規定に関わらず、精神科病院(精神科病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む)における身体的拘束の取扱いについては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)の規定による。 | (新設) |
8 (略) | 6 (略) |
【療養病棟入院基本料】 [施設基準] 三 療養病棟入院基本料の施設基準等 (1)療養病棟入院基本料の注1本文に規定する入院料の施設基準 イ 通則 ①~⑤ (略) (削除) | 【療養病棟入院基本料】 [施設基準] 三 療養病棟入院基本料の施設基準等 (1)療養病棟入院基本料の注1本文に規定する入院料の施設基準 イ 通則 ①~⑤ (略) ⑥ 当該保険医療機関において、適切な意思決定支援に関する指針を定めていること。 ⑦・⑧ (略) |
第2 病院の入院基本料等に関する施設基準 4~4の10 (略) (削除) | 第2 病院の入院基本料等に関する施設基準 4~4の10 (略) 4の11 「基本診療料の施設基準等」の第五の三の(1)のイの⑥に規定する「適切な意思決定支援に関する指針」について 「適切な意思決定支援に関する指針を定めていること」とは、当該保険医療機関において、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、意思決定支援に関する指針を定めていることをいう。 |
4の11 (略) | 4の12 (略) |
※ 有床診療所在宅患者支援病床初期加算、地域包括ケア病棟入院料及び特定一般病棟入院料の注7に規定する施設基準についても同様。 |
5.特定入院料について、一時的に施設基準を満たさなくなった場合に算定する点数が示されておらず、入院料そのものが算定できなくなっていることを踏まえ、特定入院料における施設基準を満たさなくなった場合の取扱いを明確化する。
[算定要件]
各特定入院料について、別に厚生労働大臣の定める施設基準に適合していると地方厚生(支)局長に届出を行った保険医療機関の病棟又は病室において、一時的に施設基準を満たさなかった場合、当該病棟又は病室の病床区分に応じて、次に掲げる入院基本料の例により算定する。
- A300救命救急入院料、A301特定集中治療室管理料、A301-2ハイケアユニット入院医療管理料、A301-3脳卒中ケアユニット入院医療管理料、A301-4小児特定集中治療室管理料、A302新生児特定集中治療室管理料、A303総合周産期特定集中治療室管理料、A303-2新生児治療回復室入院医療管理料、A305一類感染症患者入院医療管理料の場合
急性期一般入院料6 - A307小児入院医療管理料(5の精神病棟を除く。)の場合
地域一般入院料3 - A306特殊疾患入院医療管理料、A308回復期リハビリテーション病棟入院料(一般病棟に限る。)、A308-3地域包括ケア病棟入院料(一般病棟に限る。)、A309特殊疾患病棟入院料、A310緩和ケア病棟入院料(一般病棟に限る。)、A317特定一般病棟入院料、A319特定機能病院リハビリテーション病棟入院料の場合
一般病棟入院基本料の特別入院基本料 - A308回復期リハビリテーション病棟入院料(療養病棟に限る。)、A308-3地域包括ケア病棟入院料(療養病棟に限る。)の場合
療養病棟入院基本料の入院料27 - A307小児入院医療管理料(5の精神病棟に限る)A311精神科救急急性期医療入院料、A311-2精神科急性期治療病棟入院料、A311-3精神科救急・合併症入院料、A318地域移行機能強化病棟入院料
精神病棟入院基本料の15 対1入院基本料 - A311-4児童・思春期精神科入院医療管理料、A312精神療養病棟入院料、A314認知症治療病棟入院料の場合
精神病棟入院基本料の特別入院基本料
※新生児特定集中治療室重症児対応体制強化管理料は1、地域・救急等包括ケア病棟入院料は2、精神科地域包括ケア病棟入院料は6と同様。
【参照元】
中央社会保険医療協議会 総会(第584回) 2024年2月14日
○答申について PDF 総-1
(1)令和6年3月31日において現に入院基本料又は特定入院料に係る届出を行っている病棟(同日において、療養病棟入院基本料、有床診療所在宅患者支援病床初期加算、地域包括ケア病棟入院料及び特定一般入院料の注7に規定する施設基準の届出を行っている病棟を除く。)については、令和7年5月31日までの間に限り、第四の七に該当するものとみなす。
(2)令和6年3月31日において現に入院基本料又は特定入院料に係る届出を行っている病棟については、令和7年5月31日までの間に限り、第四の八に該当するものとみなす。